宇治抹茶・宇治碾茶づくりについて

碾茶(てんちゃ)とは、抹茶の原料となるお茶のこと。
新芽が芽吹く頃に肥料をたっぷり含んだ自然仕立ての「覆下(おおいした)茶園」で育てられた茶葉を、丁寧に一葉一葉手で摘み採り、蒸し、碾茶炉という独特の炉で乾燥させたものを 「宇治碾茶」 、そして、その碾茶を石臼で丁寧にひき、粉末状にしたものを「宇治抹茶」と呼びます。

お茶は、農作物。

「茶舗 ゆと葉」をいとなむ長谷川榮製茶場は、江戸時代より代々続く碾茶農家です。
京都宇治にある自家茶園では、良いお茶が収穫できるよう、一年を通して手作業で心を込めて茶畑の世話をしています。
長谷川榮製茶場の春夏秋冬をご紹介します。

初夏 - EARLY SUMMER

茶摘み

5月にお茶摘みがはじまります。

この時期、茶樹は背丈ほどまでに成長しています。刈り揃えることをせず自然に伸びるままに任せるため、新芽は茶樹の至る所から自由に芽吹き、摘み子さんが埋もれて見えなくなるほど。宇治の「自然仕立て」の茶園ならではの光景です。

一年間しっかり肥料を施され、体内に栄養分をたっぷりと蓄えた新芽を摘み子さんの手で一葉一葉丁寧に摘み採っていきます。

Summer

番刈り

茶摘みが終わった後、茶樹を刈り込む「番刈り」を行います。陽を遮り、新芽を摘み採ったため弱った茶樹をひとまわり小さくして栄養を行き渡らせ、回復させるための大切な作業です。

また「番刈り」のほかにも、夏の強い陽射しから茶樹を守るために寒冷紗の開け閉めをしたり、茶の木にからまったツルなどを手作業で除草していくといった、時間や手間がかかるけれど、大切な仕事がたくさんあります。

AUTUMN

施肥と深耕作業

秋は肥料をしっかりあげ、茶樹にたっぷり栄養を蓄えます。

施肥後、踏み固まった土をほぐす深耕作業で、茶樹の毛根の育成を促し、肥料を茶樹に行きわたらせるよう、土づくりをしっかり行います。

WINTER

摘芯と藁集め

冬の恒例行事は「摘芯」です。脇芽の発育を促すため、あたまの芽を摘み採る作業です。
そうすることで、春に茶樹全体、足元からも新芽が芽吹く自然仕立て特有の茶樹へと成育します。
全ての畑の茶樹に手作業で行うため、家族総出の作業です。

そして「藁集め」も大事な冬の作業。
集めた藁は、茶園の夏の干ばつ対策や雑草予防などに使用します。

SPRING

施肥

春先にも魚カスや黒糖などを含む自家配合の有機肥料をたっぷりと施肥します。

そして、新芽の芽吹く頃、茶畑を寒冷紗で覆います。天候や、気温、その年の新芽の状態を見きわめて、一重覆い、二重覆い、側面の覆いと、状況に応じて寒冷紗を広げていきます。

日光を遮断することにより、甘み旨味の成分である 「テアニン」の生成を促すことができ、独特の芳香を持つ茶葉が育つのです。

そして、ようやく5月の茶摘みの時期を迎えます。

  • お茶ってどんな植物?

    チャの木は、ツバキ科の永年性の常緑樹です。ツヤのあるしっかりとした緑色の葉を持ち秋に白い花を咲かせます。

  • お茶の種類

    育て方・加工の仕方の違いがお茶の種類を作ります。育てる際に覆いを使い、摘み採られた茶葉を蒸し、碾茶炉と呼ばれる独特の炉で乾燥させ たものが「宇治碾茶」と呼ばれます。

  • 覆いの役割いろいろ

    茶畑の覆いは、新芽が芽吹く頃に茶畑を覆うほかにも、夏の強い日差しを避けたり、霜の害から茶樹を守ったりと、年間を通して活躍します。 毎日、その日のお天気と茶樹の様子を見ながら、寒冷紗を手で開閉し、茶畑の状態をコントロールしています。

  • 茶葉と部位とお茶の種類

    碾茶はどの部位であっても飲み方しだいでとてもおいしくいただけます。

    風土の恵みを存分に受け、丁寧に育てた碾茶だからこそ、まるごと味わっていただきたいと願い、長谷川榮製茶場の自家茶園で手摘みした茶葉を自社茶工場で仕立て、商品作りをしています。

おいしい抹茶・碾茶ができるまで

手摘みで採られた新芽が、碾茶、抹茶として仕立てられるまでにも多くの手間があります。
長谷川榮製茶場の茶工場の様子をご紹介します。

Picking

摘み

茶摘みは5月に始まります。一年に一度、春にだけ、摘み子さんの手によって一葉一葉ていねいに摘み採ります。

適期の短い新芽の状態を見極めながら、指先に葉の薄さや弾力を感じながら、柔らかな新芽だけを摘み採ります。
一年間、心を込めて育ててきたお茶の樹に感謝する瞬間です。

Separating

ほぐし

摘むと茶葉の劣化が始まるため、摘み採った新芽はすぐに製茶場に運び、ほぐしながらコンテナにあけていきます。

コンテナの中は送風がおこなわれていて、新芽の劣化や萎凋を防ぎます。

また、コンテナから、茶工場の第一段階となる「流し」に新芽を入れ、さらにほぐしながら次の工程へと送ります。

Steaming

蒸熱

ほぐした新芽を、茶葉の状態に合わせて蒸し機にかけます。

この蒸すというプロセスは、宇治の伝統栽培法の大切な工程の一つ。

最適な蒸し具合は、蒸された新芽の香りと色味などから、五感で確認、判断します。

蒸し時間の絶妙な組み合わせは、この一年の苦労と、皆の手間をちゃんとうまく昇華できるかの勝負どころ。

Spreading

散茶

蒸された茶葉は、高さ5メートルほどの「あんどん」というネットで覆った冷却用の散茶機の中を、風力を用いて吹き上げられます。

変色を防ぐために茶葉を素早く冷まし、重なった茶葉を展開させ、余分な水分を取り除きます。

Roasting

炉乾燥

茶葉は、15mほどある長い碾茶炉に入ります。内側は三段のベルトコンベアーのようになっていて、茶葉を180~200°Cで20分ほど乾燥させ、仕上げられます。

熱風乾燥などではなく、この独特の炉によって乾燥させるプロセスこそが「宇治碾茶」と呼ばれる条件のひとつでもあります。

Selection - Finishing

選別 / 仕立て

茎や細かい葉脈などをひとつひとつ手作業で取り除き、選り分けます。

葉部分は「碾茶」に、 葉脈部分は「碾茶折」に、茎部分は「茎ほうじ茶」に仕立てられます。

また、取り除いた黄葉や石臼で挽くには難しいとされている「重なり葉」などは廃棄せず、別の用途のお茶やお香などに形を変えてお客様のもとへお届けしています。

COMPLETION OF TENCHA

碾茶のできあがり

葉脈もすべて丁寧に取り除き、薄葉の部分だけで仕立てた「碾茶」ができあがりました。

碾茶は手で揉まないので、茶葉は細くない独特の形をしています。葉がふわっとして軽やか、緑が濃いのも特徴です。

お茶の水色は、透明感のある美しい緑色で、ふくよかな香り、旨味、甘みの心地よい調和を愉しんでいただけます。

GRINDING

碾き(ひき)

碾茶を石臼で碾き、粉末状にすると抹茶ができます。

手摘み茶葉はとても繊細で、同じ原料でも、碾き方しだいで味はもちろん、色の冴えも変わります。

1時間かけて、碾きあがりはたった40g。石臼に熱がこもると味が変わるので、付きっきりの碾き作業です。

抹茶をいかにおいしく飲んでもらえるかを考えながら、丁寧に行います。

COMPLETION OF MATCHA

抹茶のできあがり

石臼で丁寧に挽いたものを篩でふるって粒子を整えたら、ついに宇治の手摘み抹茶の完成です。

目に鮮やかな深みのあるグリーン。
そして、ふくよかで上品な風味と芳醇な香りと余韻。
五感で楽しみ、味わっていただける特別なお抹茶です。

「茶舗 ゆと葉」おすすめの抹茶・碾茶商品

自家茶園で手摘みした茶葉を、自社茶工場で仕立て商品作りをしています。
長谷川榮製茶場の碾茶商品をどうぞご賞味ください。